ユダヤ人の二重構造

「ユダヤ人」について改めて述べておきたい。
現在のイスラエル共和国の国民は基本的に「ユダヤ人」だが、「イスラエル人=ユダヤ人」ではない。
「ユダヤ人」の定義は、血統関係なく、ユダヤ教で結ばれた民族であり、もしあなたがユダヤ教徒になれば、あなたは即「ユダヤ人」という事になる。
また、母親がユダヤ教徒であれば、本人はユダヤ教徒ではなくても「ユダヤ人」とされる。

「日ユ同祖論」でいうユダヤ人は、通常「失われたイスラエル10支族」を指すが、これは間違っている。
古代イスラエル王国で10支族と2支族が分裂し、両者をイスラエル民族というが、「ユダヤ人」とは後者の2支族のみを指す。
2支族は「ユダ族」と「ベニヤミン族」から成るが、狭義の意味ではユダ族を「ユダヤ人」と呼ぶ。
尚、「ユダヤ教」とは、南ユダ王国の2支族が成立した一神教であり、北イスラエル王朝の10支族の信仰とは異なる。

一般的に「ユダヤ人」というと白人のユダヤ教徒、いわゆる「アシュケナジー・ユダヤ人」と呼ばれている。
少し詳しく説明すると、現在のユダヤ人は大別して、スペイン系の「スファラディー・ユダヤ人」と、東欧やドイツに現れた「アシュケナジー・ユダヤ人」が存在する。
現在のイスラエルには、スファラディーとアシュケナジーが共存しているが、少数のアシュケナジーに支配される形でスファラディーが存在している。

問題は、ユダヤ人陰謀説などで、スファラディーは血統的ユダヤ人で、アシュケナジーは偽ユダヤ人だとされている点である。
何故なら、イスラエルが位置する中東は、セム族で占められるアジアであり、白人のアシュケナジーはユダヤ教に改宗しただけのユダヤ教徒に過ぎない、という理由からである。
同様に、アシュケナジー・ユダヤ人は、古代イスラエル民族の血統ではないと考えられている。


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もっとも、それにはそれなりの根拠と理由がある。
アシュケナジー・ユダヤ人のルーツは、ロシアのコーカサス地方からカスピ海にかけて繁栄したハザール汗国にあり、8世紀頃に国教がユダヤ教となった。
ユダヤ教に改宗したハザール人は、聖書を熱心に研究し、世界初のヘブライ語の辞書を編纂したりしたが、自分たちのルーツがイスラエル民族ではないとの自覚から、ノアの子孫の「アシュケナジー」を民族名としたのである。

だが、そうとは言い切れない。
確かに、ハザール人はトルコ系の白人だったと言われており、「アシュケナジー」は白人の祖となったノアの息子ヤフェトの孫である。
トルコ人は元来、モンゴロイドだとされているが、話はここからである。

ヤフェトの子、つまりアシュケナジーの父親の名をゴメルというが、紀元前6世紀頃、スキタイ族が中央アジアから黒海の北部に進出し、キンメル人(ゴメルの子孫)を追い出したという。
夢蛇説では、スキタイはヒッタイト→ギリシア系騎馬民族である。
彼らはモンゴル高原からコーカサス地方、黒海、カスピ海、そして中央アジアからインド亜大陸まで、ユーラシア大陸全域を凌駕していた。
サカ族やフン族もスキタイ族の末裔だが、スキタイ族は各部族ごとに各地に分散し、現地に浸透していったと考えられ、大別して「モンゴル系」と「トルコ系」に分かれたと言われている。

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トルコ人の出自が中央アジアにあり、また「日本トルコ同祖論」の観点からみると、トルコ人もスキタイ系なのかも知れない。
現在のトルコ周辺は、かつてヒッタイト帝国が栄えた地であり、また、紀元前からペルシア系民族が住み、アレクサンドロスの遠征以降はギリシア系の支配が続いた白人系の国々である。

ただ、一言付加しておくと、各民族の人種については諸説あるが、例えば「スキタイ」はアーリア人種だと言っても、様々な人種で構成されていたようで、また、古今東西、混血が重ねられてきた以上、肌の色を含めて明確に人種を区別することは出来ない。
それでも敢えて推測すれば、イスラエル民族の中でもユダ族は特にヒッタイト人と同化しており、コーカソイドの特徴を多分に持っていた可能性がある。
その「スキタイ」が、ヒッタイト人の末裔であることを否定する材料はない。

コーカサスからカスピ海にかけて繁栄したハザール汗国は、かつてスキタイ族が闊歩していた地域である。
トルコ系民族のハザール人は「勇猛果敢な戦士」だったとされているが、その正体はスキタイ族の末裔なのではないだろうか。
それが事実であれば、アシュケナジーの子孫であるキンメル人を追い出したスキタイ族の末裔が、後世にハザール汗国を建国した可能性が高い。
とすれば、ハザール人はアシュケナジーの子孫ではなく、スキタイ族の末裔ということになる。
勿論、スキタイ族の中にはアシュケナジーの子孫も含まれていた可能性もあるが、スキタイ族とイスラエル人との民族融合があった事を忘れてはならない。

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「失われた10支族」がスキタイ族と合流して日本に渡来した、という説も私は確信しているが、2支族の「ユダヤ人」もヒッタイト人と混血していたし、南ユダ王国滅亡後に一部のユダヤ人はペルシア人に同化した。
両者がどのような関係にあったかは想像の域を出ないが、「スキタイ系イスラエル10支族」と「スキタイ系ユダヤ人」が存在した可能性を主張したい。
スキタイ族は「モンゴル系」と「トルコ系」に分かれ、モンゴル帝国にはモンゴル族以外に、アーリア系の白人やセム系のユダヤ人も存在したと言われている。
主に北東アジアに「スキタイ系イスラエル10支族」が定住したと仮定し、「スキタイ系ユダヤ人」がハザール汗国を建国したと私は考えている。

ハザール人はトルコ系言語を話し、突厥文字を使用し、アルタイ系騎馬民族の特徴を色濃く持っている。
そして、ハザール王国建設の中核となったのは、万里の長城の内外で中国との死闘の末に敗れ去り、新天地を求めて西に向かった突厥の王家「阿史那(あしな)」の一派だったと言われている。
但し、日本にも2支族のユダヤ人は入ってきているし、逆にハザール汗国にも10支族の一部が住んでいた可能性もなくはない。
しかし、2支族と10支族の間に、血統的な大差は有り得ない。

それが事実だとすれば、大変なことになる。
「日本人」と「アシュケナジー・ユダヤ人」が、同じ祖先を持っている事になるからだ。
それは、「日本トルコ同祖論」と通じるものがある。
では何故、肌の色、人種が異なるのか。
それは、日本列島とコーカサス地方の原住民の人種が異なっていたからに他ならない。
勿論、仮説に過ぎないが、原住民との混血によって人種に差が生まれたのである。

尚、トルコの国旗が三日月と星である事にも注意して頂きたい。
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問題は、ハザール汗国は元々、無宗教国家だったとされている事である。
それは、ハザール人がハイブリッド民族だった為に国教が定まっていなかっただけで、個人的な信仰がなかったとは考え難い。
また、中国やインドに散らばったイスラエル民族が仏教に改宗したのを見ると、民族や宗教に拘りを持たず、環境に順応する一面を持った民族にも思える。
同様に、ハザール汗国のユダヤ人は、何らかの理由によって宗教を持たなかったか、或いは、血統的ユダヤ人でありユダヤ教徒である事を隠していた可能性もある。
逆に、今の日本人と同じく、自分たちのルーツを知らなかったのかも知れない。

いずれにしても、彼らは何の因果か、ユダヤ教徒になる道を選択した。
尚、アシュケナジー系とスファラディー系が、血統的に同じユダヤ人である事が遺伝子レベルで証明され、権威ある科学雑誌「ネイチャー」で既に発表されているそうである。
ユダヤ教のラビ(教師)で有名なマーヴィン・トケイヤーの説によると、ハザール人はハザール汗国滅亡と共に絶滅し、ハザール人とアシュケナジー・ユダヤ人は無関係だと主張している。

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ここで言うアシュケナジー系は「白人系」という意味合いだが、飛鳥昭雄氏や宇野正美氏は、アシュケナジー系の中にハザール人がいる事を強調している。
事実、ハザール帝国消滅後、東欧のユダヤ人口が爆発的に増えたのは、ハザール人の民族移動が考えられる。
また、ハザール人は、リトアニアの傭兵になったり、ポーランドやロシアに向かったという説も見逃せない。

ロシア連邦を構成するダゲスタン共和国には、多くのユダヤ人が住んでいるが、彼らはコーカサス山脈に住むユダヤ人や、黒海から来たカライ派ユダヤ人の子孫で、ハザール人の末裔だと言われている。
イスラエル共和国の多くのユダヤ人は、ポーランドやロシアから来たユダヤ人たちだと言われている。
そして、「ダゲスタン」の語源は、トルコ語の「山」にペルシャ語の地名の接尾辞を付けたものらしい。
ここに「トルコ」「ペルシア」「ハザール」「ユダヤ」のキーワードが並ぶことを特筆しておきたい。
いずれにせよ、ユダヤ人は世界中に離散して各民族に融け込み、白人や黒人になったケースは少なくない。

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イスラエル共和国が再建されて世界中のユダヤ人が集まってきたが、ユダヤ人のルティ・ジョスコビッツは、著書『私のなかの「ユダヤ人」』(三一書房)の中でこう述べている。

「イスラエルにいたとき、ターバンを巻いたインド人が畑を耕作しているのを見た。
どこから見てもインド人で、インドの言葉、インドの服装、インドの文化を持っていた。
しかし彼らがユダヤ教徒だと聞いたとき、私のユダヤ民族の概念は吹っ飛んでしまった。
同じように黒人がいた。アルジェリア人がいた。イエメン人がいた。
フランス人がいた。ポーランド人がいた。イギリス人がいた。
まだ会ってはいないが中国人もいるそうである。
どの人々も、人種や民族というより、単なる宗教的同一性としか言いようのない存在だった。 
私の母はスラブの顔をしている。父はポーランドの顔としかいいようがない。私もそうなのだ」


彼らは単なるユダヤ教徒故に「ユダヤ人」なのではない。
1500年の歴史を持つインド原住のユダヤ人を「ベネ・イスラエル」といい、「イスラエルの子」を意味する。
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要は、「アシュケナジー・ユダヤ人=ハザール人」と定義するなら、白人系ユダヤ人の全てがハザールのアシュケナジー系とは限らず、また、アシュケナジー系が「スキタイ+ユダヤ2支族」をルーツとし、我々日本人と同祖なのではないかという事である。
少なくとも、今日、世界の支配者として君臨する白人系のユダヤ財閥は、もともと黒人系のカナン人で、イスラエル民族との混血の末、ヨーロッパに移住して白人になった可能性が高い。
いずれにしても、我々日本人と白人系ユダヤ人は、同じ祖先を持っている可能性が高いのである。

勿論、全ての日本人にイスラエル民族の血が流れているとは限らないし、全ての白人系ユダヤ人が血統的ユダヤ人とは限らない。
また、ユダヤ人陰謀説に登場するユダヤ財閥には、創始者も含めてクリスチャンが多い事に注意するべきであろう。
ユダヤ教徒でもない人物に、「ユダヤ人」や「偽ユダヤ人」のレッテルを貼る陰謀論者の思考回路こそ、危険な思想だと私は言いたい。



神仙組外典【新世紀創造理念】天の岩戸開きとニギハヤヒの復活!よりhttp://shinsengumi3.seesaa.net/article/148792229.html


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